「知識は力なり。しかし、その知識を得るのは簡単ではない。」 -- Raconteur Publishing
私たちの周りには情報があふれています。Facebook、Twitter、膨大な量のニュース報道。しかし、その多くはただのノイズです。知識につながる情報とは、本質的で、一貫性があり、意味と価値とを持つものです。2020年に好成績を収めた企業は、そのことを知っていたからこそ、時間とリソースを投資して、市場を調査し理解しようとしたのです。2021年を代表するようになるイノベーターも、同様であることが予測されます。
「市場でイノベーションのトップに立ち続けるには、特許分析が不可欠です」と、アナクアの特許分析担当ディレクターのマット・トロイヤー(Matt Troyer)は述べています。アナクアは、特許出願数トップ20の米国企業とトップ20のグローバルブランドの50%超にサービスを提供しています。
アナクアのAcclaimIPプラットフォームが分析した特許統計によると、2020年、世界で400万件以上の特許が付与されました。そのうち270万件は中国で出願されたもので、イノベーション競争における中国の優位性を物語っているように思われます。「ですが、注意深く見てみると、この数字は実態を正確に反映しているわけではありません」とトロイヤーは語ります。
1月時点で、中国特許のうち、中国国外で付与されたものは139,000件に過ぎず、残りの特許は商業的または社会的価値がそれほど大きくないことを示しています。
「商業的価値のある特許であれば、特許権者は中国国外でも登録したはずです。この20年間、特許の付与件数は安定して増加していますが、そこに占める中国特許の割合はほぼ一定に留まっています。」
中国のみで登録され他の国に対応特許を持たない特許を除くと、2001年の世界の特許付与件数は72万弱、2020年には130万件超となっています
「企業は、競争力を高めるためにアナクアのAcclaimIPのような特許分析ソフトウェアを利用しています。あるアイディアや発明の着想が過去に特許として登録されたか否かを調査し、そのイノベーションが期待通り新しいものだと確かめることができます。新規性がなければ、特許を出願しても登録されることはないのですから。」
イノベーションを牽引する企業としてリストにあがったのは、サムスン電子で、17,955件となります。次点は、ファーウェイ・テクノロジーの12,099件で、IBMが9,931件、キヤノン株式会社が9,278件、LGエレクトロニクスが9,221件と続きます。
イノベーションは時代の潮流です。世界知的所有権機関(WIPO)が発行する世界知的財産指標レポート(World Intellectual Property Indicators 2020)の2020年度版で公開された直近の12か月の統計によれば、世界の特許出願数は2.3%増加しました。これは、過去数年間で最も高い増加率です。しかし、ここには中国は含まれません。この統計は2019年を対象とするものですが、中国を含めると、世界の特許出願は3%減少したことになり、10年ぶりの減少となります。
しかしながら、WIPOの報告書は楽観的です。この減少は、「中国では、出願の仕組みを最適化させるために規則の大幅な変更が行われており、その中で中国在住者による出願が急減した」ためだと述べています。商標出願は5.9%増加し、意匠出願は1.3%増加したとのことです。
この統計は新型コロナウイルスの感染拡大以前のものですが、WIPOは「現存する知財活動の強力な基盤が、パンデミックが収束したときに、新たな成長を支えることになる」と確信しています。研究開発(R&D)に要する時間を考慮すれば、新型コロナウイルスが特許に与える影響が現れるとすれば数年後になることでしょう。
このことを踏まえて、AcclaimIPの特許データ調査を参照すると、革新的な企業がどれほどすばやく現在の情勢に適応しているかが分かります。新型コロナウイルスが初めて引用されたのは2020年3月で、当時、中国国外ではまだほとんどの人がこのウイルスのことを知りませんでした。
特許は、競合他社から自社の情報を守るという経営経済的に重要な能力を提供するものであると同時に、ライバル企業の研究開発部門に侵入するのと近しい機能も持っています。
「特許は、企業にとってトレードオフのようなものです」とトロイヤーは述べます。「特許権者は、通常20年に渡って他者が発明を利用できないようにする権利を得ますが、それと引き換えに、発明をライバル企業に対しても完全に公開しなければなりません。そういった意味から、特許以上に競合他社の発明に関する技術的情報や詳細な記録を豊富に知ることのできるものはありません。特許は、競合他社のイノベーション活動とロードマップの最も包括的なデータコーパス(構造化し集積されたもの)なのです。」
特許出願は、所有者から創造的破壊者、新しいプレーヤーの出現まで、注意を喚起するものになり、競合他社のポジションを示すものにもなります。大企業は特許データを活用することで、同じ分野に参入しようとするスタートアップ企業や、ライセンス可能なイノベーションを開発した大学などをモニタリングしています。
「特許のランドスケープをマッピングするということは、たとえば、ある技術における特許を特定し、特許権者、発明者、技術、出願日、出願国で分類することです」とトロイヤーは説明します。「特許ランドスケープによって、ビジネスマネージャーは競争における自社の位置を評価することができます。また、製品に新しい特徴を追加したり、新規市場に参入したりする前に、複雑な特許の世界に道筋を立てることができます。
競争の激しさと発明の重要性は増すばかりですが、幸い、特許分析によって、企業はノイズと本物の情報とをふるいにかけ、情報に裏付けされた判断を下すことができます。
企業が時間とお金を浪費して、自社のイノベーションを活用する権利を失ったり、既に発明されている特許を出願してしまうようなことでは意味がないのですから、分析を最大活用して出願の価値を高めるべきです。」