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【アナクアの新しいレポート機能】特許の価値判断を支援「更新要否判断レポート」

分析 | 知財費用管理 | 特許管理
Tags: AQX知財総合管理ソリューション, AcclaimIP (アクレイムIP), 特許年金

知財資産を維持更新すべきか、それとも放棄すべきか、どのように判断していますか。
知財資産の維持更新に関する意思判断プロセスは複雑でリスクも伴うタスクとなります。維持更新の判断によって、特許ポートフォリオが製品を保護できるかどうか、競合他社を抑えられるかどうか、競争力を強化できるかどうかが決まるからです。このブログでは、知財ライフサイクルにおけるいくつかの推奨される判断材料とアナクアの新しい分析レポートについて説明をします。特許維持に関わる判断プロセスは時に不透明なものですが、このレポートを利用することで、そのプロセスを明確化することも可能になります。

対象分野の専門家による評価、特許から製品へのマッピング、競争力のある請求の図表化などのような、クオリティの高い社内特許情報は何よりも重要であり、これらに代わるものはありません。そして、その社内の特許評価を外部の分析で補完することは、維持更新に関する判断をサポートする上で有効であり、ぜひ実施すべきものと考えられています。

アナクアAQX®に新しく搭載されたAcclaimIP™ Annuity Decision Report™ (AcclaimIP更新要否判断レポート)は、特許ポートフォリオ担当者が維持更新判断に関する難問を解決する支援を提供します。このレポートには、リアルタイムに更新される特許分析ダッシュボードが含まれており、特許の維持更新や放棄に関する判断をデータに基づいたものにすることを支援します。

レポートは10のセクションに分かれ、主要な特許指標、請求分析、中間処理履歴、特許ファミリーのタイムライン、引用と拒絶の指標、国内展開とEP有効化の相対的存続率などを網羅しています。

維持更新の判断を変革するこの新しいレポートのうち、次の6つのセクションについて詳しく紹介します。

  1. 主要特許の価値指標ベンチマーク
  2. 特許ファミリー全体の中間処理履歴
  3. 特許請求の評価
  4. 中間処理タイムライン
  5. 存続率ベンチマーキング
  6. 前方引用データと後方引用データ

 

1. 主要特許の価値指標ベンチマーク

特許価値指標は、自社の知財ポートフォリオ戦略をサポートするために広く使用されています。しかしその課題は、意思決定のためにすべての価値指標を1ヶ所にまとめるのに時間がかかること、そして、それらの指標をどう解釈すべきかということです。

更新要否判断レポートの機能には、検討対象の特許とほぼ同時期に出願された同一クラスの特許群とを比較する、一般的に認められた一連の特許価値指標があります。これは、例えば自社特許の請求の長さだけなどでなく、関連性の強い他の特許に対しどの程度強度があるのかを知る支援となります。特許価値指標になじみがない場合、各ベンチマークの説明とそのベンチマークの持つ意味も表示されるため、指標の意味も理解できるようになっています。

 

図1:更新要否判断レポートの価値指標とベンチマーク

 

2. 特許ファミリー全体の中間処理履歴

多くの特許が複数の国で異なる審査官により審査されるため、適切に特許を評価するには中間処理の履歴が役立ちます。これらのデータを手作業で集めるために多くの時間が費やされることもあります。また、大規模な知財ポートフォリオに対して例えば1,000件近い更新に対する意思判断を行う場合、これらすべてのデータポイントを手作業で総合的に収集して加工するには膨大な時間とリソースが消費されます。

更新要否判断レポートには、ファミリー内の全特許のタイムラインと各特許のステータスが含まれています。レポートは、更新や放棄の判断に不可欠な重要な考察を提供します。

図2:ファミリータイムライン例 – EU内2ヵ国では放棄が行われUS案件に関連した大きな特許期間調整 (PTA) が実施されている。

 

たとえば、特許が3つの法域で審査されすべて登録された場合、請求の有効性が高い可能性があります。3人の異なる審査官が請求を許可したからです。しかし、反対に登録に至らなかった場合には、1以上の法域の審査官がその特許を無効にし得る先行技術を発見したと考えられます。

もう1つの例を挙げましょう。ある米国特許について、7,700ドルの費用のかかる3回目の更新が近づいた時、初めはわずか1年強の存続期間しか残っていないように思えるかもしれません。しかし、約4年の特許期間調整(PTA)制度によって、7,700ドルの投資に見合う存続期間となることが判明する場合もあります。

 

3. 特許請求の評価

中間処理における請求や経緯、審査官補正を読み始めると、さかのぼって請求だけをもう一度読み直す気にはなれないものです。更新要否判断レポートの請求分析ツールは、出願時の請求と登録された請求を比較する機能を搭載しています。これにより、特許の請求をより速く、より正確に分析することができます。また、答えを出すべき問題を発見するのにも役立ちます。

以下の例では、新たな限定(緑色の下線付きで表示された箇所)が追加され、請求1が変更されたことがわかります。これらの変更によって、特許は大幅に減縮されたのか、直近の社内関連特許レビューでは、何が認められたか何が請求されたかが考慮されていたのか、問われるべき問題を発見する支援もレポートは提供します。

 

図3:請求分析ウィジェットにより請求分野や登録特許の請求、特許ファミリーの文書にある請求を比較。

レポートは、特許ファミリーを横断した請求分析にも対応しています。この例では、カナダとメキシコの特許両方が登録前に放棄されているため、いくつかの疑問が生じます。このウィジェットを使用すると、このようなファミリー全体の請求を表示および比較することが出来るようになります。

 

4. 中間処理タイムライン

更新要否判断レポートで最も強力な可視化の1つは、中間処理タイムラインです。ここでは、この特許が2つの拒絶(赤い下向き三角形)を受けていること、1件目の拒絶に限定要求が含まれていることが一目で分かります。請求は、許可通知(NOA)を受領する前に2回変更されています(青の上向き三角形)。このような中間処理のある特許は、審査官が主張する拒絶理由や引用文献に迅速にアクセスできることが大きな強みになります。赤の三角形をクリックすれば、どの先行技術を解消したかを確認でき、青の三角形をクリックすれば特許代理人や弁理士がどのように応答したかを確認できます。これにより、自社特許が実施できない可能性のある競合特許と比較して追加改良なのかどうかを判断することもできます。また、真の独自性があり、自明性やその他の拒絶理由を解消する必要がある特許を特定することもできます。

 

図4:更新要否判断レポートの中間処理タイムライン

 

5. 存続率ベンチマーキング

総合的な知財戦略を立案する上で、技術の成熟度と特許の生涯価値を追跡する能力は非常に重要です。アナクアでは、クライアントワーキンググループからのフィードバックにより、更新年(米国の場合は各期間)ごとに類似特許の存続率をベンチマークすることが検討されました。

これを受けてアナクアは、類似特許が時間の経過とともにどのように存続するかを可視化するインタラクティブな表示機能を開発しました。以下の例では、類似特許が12年目頃までで減少し、そこから安定していることが分かります。言い換えれば、12年目まで存続すれば、その特許は期間満了まで生き残る傾向があるということです。

 

図5:更新要否判断レポート上で特許存続率を表示。

この情報は一度に1つの国についてだけ閲覧することも可能です。また、USおよびEP有効化に特有の要素をカバーするための特別な可視化も開発されています。

 

6. 前方引用、後方引用、および拒絶データ

特許維持更新の判断において、後方拒絶は前方拒絶に劣らず重要です。請求の質と範囲は、権利を受けるために解消した拒絶理由で引用された先行技術に直接関係します。更新要否判断レポートの拒絶スナップショットには、前方拒絶と後方拒絶の両方を含める機能も拡張搭載されています。

 

図6:後方拒絶分析は、中間処理履歴と審査官による拒絶の内容で特許を評価する場合にも役立ちます。レポートはトグルボタンで前方と後方の拒絶データを交互に切り替えることも可能。

 

最後に

更新要否判断レポートを活用すれば、多くの時間とリソースを費やしてすべての情報の全容を把握したり、限られたデータで結論を出す場合のリスクが大幅に低減されます。

アナクアのクライアントワーキンググループとの協働で開発されたAcclaimIP更新要否判断レポートは、効率的そして効果的に更新維持の判断を行うために必要な全データへのアクセスを支援します。そして、レポート内の各ウィジェットは、さらなる疑問に答える支援を提供します。レポートに含まれる一連の分析と可視化が連携して社内データの強化に必要な情報をすべて提示するため、予算を効率的に活用した最適な特許ポートフォリオを確実に構築、維持することを可能にします。これにより、最も価値のある知財資産を維持するために、情報不足の、あるいは偏った判断を行う可能性が低減されます。

 

お問い合わせは ContactJapan@anaqua.comまで。

 

更新要否判断レポートは、AcclaimIP™ソフトウェア、AcclaimIPラインセンス付きのAQX®知財管理プラットフォーム、またはアナクア・サービスライセンス付きのAQXプラットフォームを通して利用ご利用いただけます。

 

著者:マット・トロイヤー