知財チームと研究開発チームが最適に構造化されたプロセスや仮想環境を活用してイノベーションを促進する手法を紹介します。
今までの多くの知的財産チームと研究開発チームとのコミュニケーションは必要に応じて都度であることが多く、イノベーションの管理は高度に構造化されていませんでした。知財チームは、新しいアイデアについて研究開発チームから連絡を受けて初めて、予想される法的な問題に対応することもありました。多くの場合、知財チームはトリアージの危機が発生するまで呼び出されないことも多々あったことでしょう。
昨今、知財チームは受け身的な対応から積極的対応に移行し、効果的にイノベーションに対するコラボレーションを行う新しい方法を模索している傾向が見られます。それには、企業文化を変革するとともに、より良いコミュニケーションとフィードバックのループを可能にする、イノベーション管理ソフトウェアを使用することが有効とされています。
研究開発チームが最高のアイデアを得るためには、組織全体からのさまざまな相互協力や情報が必要です。しかし、アイデアの権利化においては、より具体的な問題解決アプローチを用いなければなりません。アイデアに対するコミュニケーションやブレインストーミングを行うこと、そしてそれらのアイデアを価値ある知財資産に変えるという両方のフェーズにおいて、研究開発チームと知財チーム両者のための使いやすいコラボレーションツールが求められるのです。
AQX®イノベーション管理は、コラボレーションを促進し、事業のニーズに合わせてカスタマイズされたクラウドベースの総合的なイノベーション・ツールを提供しています。AQX 10.8バージョンは、目の前にある問題やリスクへの対応から、研究開発チームとのより容易なコラボレーション、情報共有、イノベーションの推進、競争力のある付加価値を事業にもたらす特許ポートフォリオの形成を目的とした多様なツールを提供しています。
社内外から最高のアイデアを集める
イノベーションを促進するためのプラットフォームを検討する際に重要なのは、社内外のビジネスパートナーが組織全体から新しいアイデアを幅広く把握・追跡できるようにするソフトウェアを特定することです。さらに、異なるビジネスユニット用に個別に設計されたポータルを使用すれば、それぞれのチーム専用の戦略的イノベーション指針をチームに提供したり、各ユニットが各自最適な方法でイノベーション管理ソフトウェアを使用することが可能になります。
ロゴなどを利用したブランド感を創出するポータルは、異なるプロダクトチームまたは外部パートナーのチームとしての一体感やモチベーションを高めることにも活用できます。 AQXイノベーション管理は、自社ブランドに合わせてカスタマイズできる、アイデア創出とコラボレーションのための専用ワークスペースを提供しています。
- ワークスペースを使用して課題、関心分野、目標を提示、戦略的イノベーションを促進
- プロジェクト追跡やデータ分析などの他のツールと連携。ユーザーは、メッセージボードにアクセスして必要に応じたコミュニケーションを実行
以下の例は、さまざまなチームが組織の異なる部分に対してポータルをカスタムブランド化した例を示しています。
図1:ブランド感を創出するAQXイノベーション管理
AQXイノベーション管理ポータルは、ビジネスユニットや社内外の利害関係者ごとに編成することができます。プロジェクトに関する情報へのオープンアクセスがチームのイノベーションやコラボレーションに役立つ場合もありますが、情報の機密性が重要な場合もあります。AQXイノベーション管理は、これらのすべてのニーズを満たす、次のようなカスタマイズを提供しています。
- 特定のイニシアティブやビジネスユニットごとのプラットフォーム編成
- 機密制限付きまたはオープンなイノベーションへの対応
- アイデア履歴の追跡(不採用となったアイデアとその理由を含む)
- 最高レベルのセキュリティ
社内のさまざまな部門からフィードバックを得る
組織内の各チームからのアイデアを把握し、組織全体でアイデアの他花受粉、すなわちアイデアの相互交流を図ることで、さらなるイノベーションの機会が生まれます。
たとえば、ある種子生産企業が農家だけでなく、住宅地の芝生や庭で種子を使用する消費者にも製品を販売しているとします。この企業で、農業グループの発明者が、種子の干ばつへの耐性を高める方法を発見しました。単体のグループが権利化措置をとって特許を出願した場合、芝生や庭でも効果を発揮し得る、他のグループにも有益となるイノベーションの広範な適用可能性を見落とすことになりかねません。
もし同じ組織が、プロセスの早い段階で経営陣や他の部門から戦略的助言を受けたり相互的な情報交換をしていたら、事業のより広い範囲をカバーするような戦略的な特許出願と最終的な製品販売を実現できるかも知れないのです。
さまざまな利害関係者にアイデアやレビューをルーティングするためのカスタムワークフローの作成
異なる部門や離れた場所にいる利害関係者が歩調を合わせることは困難であることが多く、その結果、非効率と機会損失が生じます。AQXイノベーション管理を活用すると、カスタムワークフローを作成することで新しいアイデアに対して一連の選別や承認前の均衡を図るなどのプロセスを構築することもできます。
仮想環境上でのアイデア創出とコラボレーション
デジタル化を掲げる潮流の中、生産性を約束しながらも気を散らすだけの仮想環境コラボレーション促進ソフトウエアが氾濫しています。企業や研究機関などの組織にとって必要なのは、関係者がリモートで、オフィスで、あるいは世界のさまざまな地域を拠点としていても、全員にとって役立つ組織全体を接続するワークスペースです。
企業は、働く環境がどのようなものであるべきか、従業員が対面、リモート、ハイブリッドのいずれで働くべきかを模索し続けています。事業を横断して存在する専門家と繋がり、その意見を収集し、十分な情報に基づいて意思決定を行うには、イノベーションを引き起こし、基盤となる業務フローを改善するのに役立つ堅牢なプラットフォームが必要です。
たとえば、世界中に拠点を持ち、複数のCTO(最高技術責任者)が存在する多数多様なビジネスユニットを有する組織があるとします。
AQXイノベーション管理には、いまどんな取り組みがあるか、どのツールやテクノロジーを活用しているか、どのソリューションに重点を置いているかをCTOたちが相互に情報共有できる資産管理機能が含まれています。
アイデアの提出と共同レビューのプロセスを生成
提出されたアイデアを精査するチームが関係書類や情報に簡単にアクセスできるように、レビューそして意思決定のワークスペースを準備することが重要です。プロセスの指標も表示できるダッシュボードは、チームメンバーがイノベーションのライフサイクル全体を追跡する支援を提供します。また、特定のプロセストラックをターゲットにすることができるダッシュボードであれば、研究開発チームは個別の問題に集中できるようになる中、ビジネスユニットはより総合的な方向性や焦点に重きをおくことができるようになります。AQXイノベーション管理は、設定を変更できるレビューや評価プロセスを使用したエンドツーエンドのソリューションを提供し、優れたアイデアの提出を促進します。
図2:AQXイノベーション管理のコラボレーションワークスペース
コラボレーションの在り方は、組織ごとに異なるものです。しかし、イノベーションは社内の利害関係者だけに限定されてない、という点は多くの組織に共通しています。仮想環境上のワークスペースは、サプライヤーや外部パートナーとのコラボレーションも強化することが可能です。社内外の関係者をテストとフィードバックのループに参加させることで、組織を超えたイノベーションの文化が作りだせます。
イノベーションパイプラインのレビューと報告
発明者、研究開発者、知財法務担当者などの利害関係者がプロセスの早い段階で各自の様々な視野を提供できれば、より新しく広範なアイデアが生まれます。会話に招待するだけでは不十分です。利害関係者は、使いやすい分析ツールと一体化した効率的なプロセスを必要としています。これらを活用することで、組織は発明者や研究開発者が当初は考えていなかったイノベーションの新たな用途を発見できるようにもなり、究極的には商業化の機会も増加するのです。
AQXイノベーション管理には、イノベーション・ファネルを企業戦略と確実に一致させるための主要業績評価指標 (KPI) に関するレポートも含まれています。必要に応じてイノベーションパイプラインを事業の利害関係者に報告するための、ダイナミックなチャート、グラフ、KPIなどのパイプラインを視覚化するカスタムダッシュボードを作成することもできます。
図3:AQXを活用したアイデアダッシュボード例
優れたアイデアは単独では育たない
知財チームと研究開発チームは、パートナーシップに対するアプローチと適切なツールによって競合他社を阻止し、ホワイトスペースを主張し、営業の自由 (Freedom to Operate) を確立し、攻守両面で強力なポートフォリオを構築することができます。それにより、企業は事業の方向性に影響を与えるような手法で知財を活用、ライセンス化、商用化して、収益化する柔軟性を持つことができるようになります。
AQXイノベーション管理は、チームがアイデアを獲得し、ギャップを特定し、問題を解決し、企業のイノベーションと戦略的ビジョンを確実に整合させることができるよう支援します。その支援を活用することで、コラボレーションプロセスの改善と意思決定プロセスの強化を通じてアイデア創出が加速され、イノベーションを促進することに役立ちます。
AQXイノベーション管理は、研究開発チームと知財チームがコラボレーションをさらに強化できるように、ローカリゼーションや常用を促進するようなさらなるシステム統合など、魅力的な新機能をリリースしていきます。